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微観中国  (32)「壁の中」は快適?「ネット主権」突き進む中国
   
     


スマホに没頭する若者たち

 

 先月末、短い滞在だったが上海、北京と回った。ジャーナリスト、ブロガー、メディア研究者らと交流したが、その間一番多用したのが微信だった。今や中国の知人との交流に微信は欠かせない。面会を約束するのも、地図を画像として取り込んで添付できるほか、日本でもお馴染みのグルメサイトのURLを貼っておけば、地図ソフトを起動して経路を調べることもできる。記念写真もそのまま微信に添付し送ることができる(画質も選ぶことが可能だ)。名刺を忘れても、微信のQRコードを互いにスキャンすれば連絡先に加えることができ、むしろ名刺よりも便利だ。移動中など文字メールを打つことが面倒ならばボイスメッセージを吹き込んで送ることもできる。
 中国で10年ほど前、初めて買った携帯はガラケーだったが、友人と連絡を取るには、ショート・メッセージを送るか、電話するしか方法がなかった。ショート・メッセージは独特な文字入力が面倒で、しかも音声通話は相手の話を聞き取れないことも多く、まさに隔世の感だ。
 さらに驚いたのは、上海のメディアに勤める知人に四川料理をおごってもらった後、店員が友人の微信のQRコードをスキャン、支払いが完了したことだ。実に微信1つあればすべてができるといった印象だ。スマホユーザーが最も愛用するSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)はもはや微博ではなく、微信へと移行したと言えるだろう。上海から北京へと向う高速鉄道の中でも、隣の男性はひたすら微信のメッセージを打っていた。

     
     
     


OpenVPN

 

 ただ一方で不便な面もあった。その最たるものはグーグル系のアプリが全く使えないことだ。日本ではグーグルの検索、地図、Gメール、ドライブ、フォト、さらにユーチューブなどを使う頻度が最も高い。だが中国ではネット規制によりいずれも使えず、代わりに微博、微信やニュース、地図など中国のネットユーザー向けに開発されたアプリを使うしかない。フェイスブック、ツイッターなども使えない。特にフェイスブックは友人との交流やニュースのチェックに多用しているので、非常に不自由だ。
 さらに懸念すべきはネット管理部門により内容が検閲されていることだ。微博は言うまでもなく、「微信も書き込みが検閲されている可能性があるので、政治的に敏感なことは書かないほうがいい」と中国の友人はアドバイスをくれた。
 この水も漏らさぬネット規制「GFW」(Great Firewall、防火長城)を回避する手段として、様々な手段が使われてきた。古くはプロキシーサーバー、その後「自由門」「無極」などのパソコン向けソフトが使われていたが、最近中国の友人から教えてもらったのが「Lantern(ランタン)」だ。「Lanternを使えば、速度的にもほぼ問題なく『翻牆』(壁を乗り越える、ネット規制を回避)できる」と語った。Lanternの仕組みについては専門的であり、詳しくはサイトをご覧いただきたい。ただLanternはPCにインストールするソフトであり、スマートフォン向けのアプリはまだ出ていないようだ。このためスマホではVPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)を使う必要がある。
 VPNの技術的説明は関連するサイトを見てほしいが、今回iPadに日本であらかじめ「OPEN VPN」というアプリをインストールしておいた。ただ問題は回線速度が非常に遅く、写真のアップロードやダウンロードに時間がかかることや、利用可能な接続先がなかなか見つからないことだ。OPEN VPNは日本や世界各地で提供されている中継サーバーの接続設定をダウンロードする必要があるが、ダウンロードしてもブロックされているのか、なかなか使えないのだ。結果的に使うことができるサーバーを「切れませんように」と祈りながらアクセスを続けるしかなく、回線速度は我慢しなければならない。このためフェイスブックやGメールですら不便を感じ、ましてユーチューブなどはよほど回線状態が良い時を除き使えない。Lanternを紹介してくれた友人も、「スマホからのアクセスは遅い」と不満を述べていた。
 これは中国政府がVPNへの規制を今年(2015年)に入り強めているのが主な原因だろう。規制は今年(2015年)1月から始まり、これまで長年使ってきた多くのVPNサービスが急に使えなくなったという。ニューヨーク・タイムズ(NYT)などの報道によれば、これまで幅広く使われていたVPNが麻痺したことで、映像芸術家、ハイテク企業家、大学教授らの憤激を招いたという。同紙は中国の経済成長が鈍化する中、共産党が進める「ネット主権」(ネット検閲に対する中国政府の婉曲な言い方)は、実際には中国経済に必要なイノベーションや生産力を抑え込んでいるのだ、と批判している。
 同紙が紹介した、ネットで広がったというある科学者の文章によると、「ネット封鎖を回避するため同僚と多くの労力を費やしている」という。この科学者は「使用可能なVPNソフトを検索しダウンロードするのに多くの時間を費やしており」、「この国は口では科学を尊重し発展させると言うが、この種の封鎖は科学に携わるものへの尊重とは言えない」と批判したという。
 だがこうした批判を物ともせず、中国政府のVPNに対する規制は最近いっそう強化された。11月24日NYTによると、中国は新疆ウイグル自治区でネット規制を回避するソフトを使ったことを理由に、一部の住民の携帯電話を利用停止にしたという。パリでの同時多発テロから間もなく、地元警察はテロ対策を理由に一部の携帯利用者のサービスを停止した。
 報道によると停止されたという数人は、通信会社から地元派出所で復帰の手続きをするように言われたという。このうちウルムチ市に住む女性には、「警察からの通知で、今後2時間以内にあなたの携帯番号を停止する。もし問題があれば近くの派出所のネット警察と連絡をとるように」とショート・メッセージがあった。
 警察の説明では、利用を停止したのは次のような人だ。携帯電話の身分登録をしていない人、VPNを使ってGFWを回避している人、さらに外国のインスタント・メッセンジャー「WhatsAPP」「Telegram」を使っている人だ。Telegramは検閲を受ける恐れのある微信の代わりに利用している人が多い。
 新疆では2009年、ウイグル族と漢族の間で衝突が起きた時、政府は新彊でのネット使用を半年近く停止、いわゆる「断網」を実施した。いわば中国政府のネット管理の「実験場」(NYT)となっている。
 「中国政府は今年に入りVPNへの規制を強めているが、こうした動きは外資企業や地元企業のビジネスの障害になっている。企業はグローバルなインターネットに入り、市場情報を得たり、Gメールやフェイスブックを使ったりする必要があるからだ」―同紙はこう指摘している。

     

「第二回世界インターネット大会」正規エンブレム


同上パロディ

 

 中国当局はさらに前述の「ネット主権」を大々的に主張し、その考え方を世界にも広め、認めさせようとしている。そのお披露目の場となったのがこのほど浙江省烏鎮で開催された第2回世界インターネット大会だ。国務院新聞弁公室が9日開いた会見で、中国のネット管理の最高責任者である国家インターネット情報弁公室の魯煒主任は、自由であればあるほど秩序が必要とネット管理の必要性を強調した。
 多維ニュースなどによると、中国紙「新京報」記者は、外国メディアの報道を引用しながら「中国政府はしっかりとネットを管理している」として、ネットでの監視や書き込みの削除の問題を質問した。
 魯主任は中国がネット管理をしようとするのは、ゼリーを壁に打ち付けるようなものだとの西側の報道もあると述べ、「ネットを完全に管理している国はどこにもない。中国のネット管理の道は法による管理、つまりは自由と秩序の関係を正確に処理することだ。ネット空間も無法の地ではなく、現実社会と同様に自由と秩序が必要」と述べた。
 書き込みの削除について、魯主任は「われわれのネット告発センターには毎日数十から数百の告発が寄せられ、各サイトに削除を任せている。もちろん我々が削除を要求することもある。中国の法律に違反したり、個人の合法的権利を侵害したり、特に未成年の成長に危害を加えたりすることはできない」と述べた。
 米CNNの記者は「中国のネット管理はますます厳しくなり、ますますLANのようになりつつある。このようなネット管理は改革開放や国際的イメージに反するのではないか」と質問した。
 魯主任はこれに対し、中国には400万のサイト、7億近くのネットユーザー、12億の携帯ユーザー、6億の微信や微博ユーザーがおり、毎日300億本もの書き込みがなされている。いかなる国家や組織も300億もの情報を検閲できないと指摘。「もし我々が内容の検閲をしていれば『低頭族』(スマホに没頭する若者)のネット依存はどうして減少しないのか。だが検閲しないということはボトムラインがないということではなく、法律に違反すれば追及される」と強調した。
 16日から3日間開催された世界インターネット大会の演説で、習近平国家主席はネット空間の共同体をともに構築、管理しようとの5つの主張を発表した。
 VOAなどの報道によると、厳しいネット管理が敷かれる中国で行われた大会は、社会や世界のメディアから関心を集めた。習近平は地球規模のネット建設、相互交流促進、ネット文化交流の場の建設、ネット経済の発展、ネット安全保障の5つを主張した。そして「ネットの主権」尊重を指摘、ネットによる覇権を行わないことや、ハッカー攻撃に反対すると述べた。「われわれの目標は、ネットの発展の成果を13億の人々にもたらし、各国人民に幸福をもたらすことだ」―習近平はこう語った。
 これに対し本コラムでも紹介した自由主義派作家の慕容雪村は、VOAの取材に対し、国内のネットによる交流は政府により厳しく管理され、今回の大会で実質的な緩和は期待できないと指摘した。
 「もし自由なネットがわれわれの世界を地球村へと変えるのなら、中国政府が行っていることは中国を城壁に囲まれた村へと変えることだ。彼らは中国を情報の監獄とすることに成功し、国境の周囲を情報封鎖する高い壁で囲んだ」―慕容雪村はこう批判した。
 慕容雪村は大会2日前の14日、人権派弁護士の浦志強がネット(微博)で発表したわずか7本のコメントを理由に「民族の恨みを煽った」などとして裁判を受けたと指摘。中国政府はネットの安全を強調するが、それよりもネットの自由な交流こそが重要だと述べ、「ネットが最も不自由な国家でネット大会を開催することそのものが風刺だ」と語った。
 こうした網民の声を反映するかのように、今回の大会のエンブレムのパロディがネットで登場した。「このサイトは訪問できない」を意味する丸に「!」の警告で、ツイッターなどで拡散した。

     
     前述したように「ネット主権」「ネット覇権反対」を口実にフェイスブックやツイッター、グーグルなどの世界的なスタンダードを拒絶し、高い壁を築く一方、壁の内側で微信など「いたせりつくせり」のソフトを与えれば、大部分の人々は満足する、これが中国ネット管理部門の狙いだろう。
 だが国家の「ネット主権」ばかりを強調し、国民や市民の知る権利を軽視するようでは、今回の大会の意義も大きく失われる。特に深刻な大気汚染、ガス爆発事故、このほど発生した土砂崩れ事故など、相次ぐ「人災」の真相を究明し、責任を追及したいとの声や、身の回りで起きる汚職や権力の横暴について、自分の声を発信したいという網民の声をどこまで封じ込められるかは未知数だ。
     
 
   

 

 

 


「網民」の反乱 ネットは中国を変えるか?
古畑康雄

 

   
 
古畑康雄・ジャーナリスト
   
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