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東京便り―中国図書情報 第41回 .

 『窓ぎわのトットちゃん』、中国で1千万部超の大ベストセラーに!
   人気のわけは?

   
   

『窗边的小豆豆』(中国版『窓ぎわのトットちゃん』)日本の国民的スターでユニセフ親善大使の黒柳徹子さん(83)の自伝的物語『窓ぎわのトットちゃん』の中国語版が、6月までに発行部数1千万部を超え1017万5920部に達したことが、複数の中国メディアの報道でこのほど明らかとなった。

中国では『窓辺的小豆豆』という原題を生かしたタイトルで知られる『窓ぎわのトットちゃん』。
2003年に翻訳出版されて以来、10年余りにわたり児童書分野のベストセラーランキングの上位に名を連ねている。2年ほど前には日本での発行部数800万部を抜いて、その後もコンスタントに売り上げを伸ばしていた。中国の児童書分野で、単発本としては驚異的な記録を残したのだ。

それにしてもなぜ、これほどまでに『小豆豆』(トットちゃん)が中国で人気なのか?
6月21日に北京で開かれた記念式典から、その秘密を探ってみた――。

(※ 以下、書名は一部『トットちゃん』『小豆豆』などと略)
 
 

   
 

■黒柳徹子さん「“小豆豆”と呼んでほしい」

中国での1千万部突破を記念して、このほど北京で開かれた出版プロダクション・新経典文化股份有限公司主催の記念式典(中国語では「答謝会」=返礼会)には、多くの出版・メディア関係者をはじめ、教育専門家、児童文学作家、愛読者らが一堂に集まった。
日本からは来賓として、講談社取締役の古川公平氏、安曇野ちひろ美術館副館長の竹迫祐子さんらが出席(原書と翻訳版で使われている、画家・いわさきちひろさんの絵は、中国でも好評を博している)。

著者の黒柳徹子さんはあいにく出席できなかったが、式典では中国の読者に向けて次のようなビデオメッセージが披露された。

「もし、街の中で、中国で、お会いしたら“小豆豆”(トットちゃん)と呼んでください。そうすればすぐに、ああ、この本を読んだことのある人なのね、とわかりますから。
1千万部というのは、日本では想像できない数字です。私は本当に中国へ行って、子どもさんたちに聞いてみたい。この本を買ってくれた人たちに、どこが一番おもしろかったですかって。
だって2つの国の学校も、教育体制も異なるでしょう? いったい何が違うのか? あるいはママが違うのかしら? 自分で行って聞いてみたいのです」(「新浪読書」より拙訳)

会場をいっぱいに埋めた小豆豆ファンたちは、著者本人からのメッセージに熱心に耳を傾けていたようだ。
 
 

■中国の国語教科書に載った「小豆豆」

中国版『窓ぎわのトットちゃん』より『窓ぎわのトットちゃん』は、小学1年生で退学になった天真爛漫で元気な女の子、トットちゃんが、個性を尊重する自由な校風の「トモエ学園」に転入し、のびのびと成長していく物語。第2次大戦中を背景にした、黒柳徹子さんの幼少期における「半自叙伝」だ。
「きみは、本当は、いい子なんだよ」とトットちゃんのありのままを受け入れた校長の小林宗作先生の温かな教育も、多くの読者に感銘を与えた。
講談社から1981年に刊行され、日本での単行本、文庫、絵本の累計は800万部に上る「戦後最大のベストセラー」になった。現在、世界35カ国以上で愛読されているという。

中国語版は2003年1月に出版された。初版部数は2万部で、当初は「スローセラー」で売れ行きが伸び悩んだが、本書を手がけた新経典文化は「この作品が持つ力と、読者の眼力、判断力を信じていた」という。
全国各地で教師向けのシンポジウムや小中学生向けの朗読会、読書感想文コンクールなどを精力的に開いた結果、口コミで徐々に広まったほか、多くの学校で推薦図書に選ばれた。さらには小学校の国語の教科書に掲載されたことも、不動の人気を集めるキッカケとなったようだ。
 
 

■子どもから大人まで「人人都愛小豆豆」

『窓辺的小豆豆』は2003年末には発行部数が10万部に達し、その後も勢いが衰えることはなく2009年に200万部を突破。そして今年(2017年)6月までに1017万5920部を記録した。「中国児童書の単発本の売り上げで、一大奇跡を起こした」(中国メディア)とも評されている。
つい先日、中国語版が刊行されて話題となったお笑い芸人・又吉直樹さんの芥川賞受賞作『火花』は、原書の発行部数が300万部(2017年5月時点)に達したという。300万部という数字もすごいが、それと比べても『小豆豆』がいかに中国で浸透し、読者の心をつかんだかがうかがえるだろう。

中国のネット通販王手で米上場企業の「当当網」では、『窓辺的小豆豆』の商品ページに約100万件という膨大な数の読者コメントが寄せられている。

●「『小豆豆』は、子どもの心に最も寄り添った優れた本です。初めて読んだのは(小学)3年生のころで、こんなに分厚い本を読んだのも、布団の中で泣き明かしたのも初めてのことでした」
●「この本は子どもの心を教えてくれた。そして私を、より人間的で形式にとらわれない親にしてくれた。子どもには、永遠に光り輝く子ども時代を残してあげたいし、そのために努力したい」
●「多くの人は、トモエ学園のユニークさに興味を持つのでしょう。でも一時は挫折して教職を離れ、思い直してまた教師になった私からすれば、トモエ学園(の教育)はユニークなだけでなく、それがある種の理想と模範になっているのです」

北京での記念式典で、パネルに大書されたタイトルは「人人都愛小豆豆」(人みなトットちゃんが好き)だった。
子どもから大人(親)まで、児童生徒から教師まで、幅広い層の人に愛されているのが『窓辺的小豆豆』なのだろう。
 
 

■アンデルセン賞の曹文軒氏「主人公の名は教育」

中国版『窓ぎわのトットちゃん』より中国では『小豆豆』をめぐる教育のあり方についての議論も白熱している。
記念式典では、2016年に国際アンデルセン賞を受賞した中国の作家、曹文軒氏(北京大学大学院教授)が次のように語った。少し長くなるが、引用させていただく。

「ある意味からいえば、本書の主人公はトットちゃんでも、小林校長でもない。その主人公の名は“教育”です。
(初めの)小学校から拒絶されたトットちゃんは、ある種の教育理念や教育制度から拒絶されたといえるでしょう。幸いトモエ学園の小林校長は、他校で“落ちこぼれた”女の子を、喜んで受け入れました。そして、女の子が一気にしゃべる4時間もの話にじっくり耳を傾けた、日本でおそらく初めての人になった。
まさに偉大な人です。小林校長は教学がわかるのみならず、教育のわかる人でした。しかし、今日の中国では、教学には長けていても教育のことが本当にわかる教師や校長が欠けている。
子どもたちが、なぜこの本に惹かれるか? それは彼らがこんな学校、こんな校長先生、こんな教育に惹かれるからです。
親たちが、なぜこの本に惹かれるか? それは子どもにこうした教育を受けてほしいし、こうして自然に成長してほしいからです。
教師や校長が、なぜこの本に惹かれるか? それは彼らの主たる教育理念と、小林校長の教育理念が相容れないからです。しかし、だからといってこの本を認めない中国の教師や校長は、おそらく1人もいないでしょう」

曹文軒氏は、中国における『小豆豆』の人気の秘密と教育の課題について、そう厳しく分析する。

 

■壮絶な受験競争は「千軍万馬過独木橋」

13億の人口大国の中国では、子どもたちに日本以上に過酷な受験競争が待ち構えている。
ざっとした比較だが、日本の大学進学率(現役)は2016年に約50%(49.3%、文科省)だったのに対し、中国は2017年に同約40%(39.5% ※)でしかない。

(※)2017年、中国の大学統一入試の受験生は約940万人であるのに対し、大学の新入生募集人数は372万人(中国教育部)。

中国では一般に「いい大学に入る」ことが「将来の成功のもと」だと考えられており、そのための大学受験は、中国語で「千軍万馬過独木橋」(大勢の人がいっせいに丸木橋を競って渡る)とたとえられるほどの壮絶な戦いだ。
しかも中国では「応試教育」(受験教育)、受験突破のための「詰め込み教育」が重視されるため、子どもたちの日々のプレッシャーやストレスは相当なものだ。例えば、中国の子どもたちが小中学校で覚えなければならない漢字は最低でも3500字。日本の常用漢字2136字(2010年)の1.6倍にも当たるのである。

こうした中で、中国の一部では「子どもには遊びの時間も大切」「詰め込み教育より、想像(創造)力を豊かにする教育を」とする教育改革への議論もある。
『小豆豆』はあるいはこうした議論に一石を投じる“立役者”となったのかもしれない。

 

■作家の梅子涵氏「ノーベル“教育賞”を小林校長に」

児童文学作家で上海師範大学教授の梅子涵氏は、前述の記念式典でこう断言した。
「『小豆豆』は子どもにとっての必読書であり、それ以上に教師や親が読むべき本です。世界に何人の小林校長がいるか? もしノーベル賞に“教育賞”があるならば、彼に授与されることでしょう。なぜなら彼は、人類社会で教育のユートピアを作ろうと試みた人だからです」

また、全国語文(国語)特級教師の馬驫氏は、次のように感慨深く語った。
「大人が子どもに多くのプレッシャーを与え、子どもの生活が大人にコントロールされるのは、子どもの悲劇だ。小林校長が素晴らしいのは、しゃがんで子どもと平等に対話できること。子どもの世界は自由で、自然で、純粋だ。私たちは子どもの世界を守らなければならない。私は一人の校長として、しゃがんで子どもと対話することをわが校から始めたい。そして全ての教師に本書を薦めたい。中国の教育には、こうしたことが必要なのだ」

黒柳徹子さんは『窓ぎわのトットちゃん』で、小林先生の教育方針についてこう記している。
――「どんな子も、生まれたときには、いい性質を持っている。それが大きくなる間に、いろいろな、まわりの環境とか、大人たちの影響で、スポイルされてしまう。だから、早く、この『いい性質』を見つけて、それをのばしていき、個性のある人間にしていこう」というのでした――(「あとがき」より)。

子どもの可能性を信じ、個性を伸ばす教育が、今の中国でいかに関心を持たれているか? トモエ学園は「理想と模範」「教育のユートピア」だという読者の声は、それを明らかに示しているだろう。
 

 
     

 

 

小林さゆり
東京在住のライター、翻訳者。北京に約13年間滞在し、2013年に帰国。
著書に『物語北京』(中国・五洲伝播出版社)、訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)、
『在日中国人33人の それでも私たちが日本を好きな理由』(CCCメディアハウス)などがある。

 

  Blog: http://pekin-media.jugem.jp/
   
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